2014年3月26日水曜日

「終末期医療」を「人生の最終段階における医療」に変更-厚労省検討会報告書

藤田敦子です。2008年に終末期医療に関する懇談会で発表させて頂きましたが、やっと、患者の生きることに目を向け始めたのですね。嬉しいです。発表した内容(PDF)

ずっと厚労省の会議で「終末期医療」として話し合われていましたが、今回、発表された報告書から、「人生の最終段階における医療」に変更されました。やっとですね。がん対策の中でも、「緩和ケア」はほそぼそとしか進みませんでした。何故なのか。それは、緩和ケア病棟が、治療ができなくなった患者が行く所だったからです。緩和ケアは患者が生きていくための苦難を乗り切るためにあるはずなのに、日本ではずっと「死」の時しか出会うことがなかった。患者を支える家族も一緒に支える。もし患者が亡くなったとしても、その苦しみにも向き合ってくれる。患者にとっても、家族にとっても、「死ぬ」ための医療でなく、「苦難を乗り切る」ための医療になっていない。だから、近づきたくなかった。いえ、緩和ケアに出会うこともなかった。

委員の一人である大熊由紀子さんから送られてきたメールでは、変更理由が書かれていました。
メディアや医療界で、長年、無造作に使われてきたのが、「終末期医療」という言葉です。 死を間近にしたご本人の立場になったら、暗く、辛い気持ちになるこの言葉が、24日に最
終回を迎えた厚生労働省の検討会が報告書で「人生の最終段階における」と変更され、タイトルも、そのように変えられました。その理由を報告書はこう記しています。 「名称を変更することで、医療行為のみに注目するのではなく、最後まで尊厳を尊重した人間の生き方に着目していくことに重点をおく」 「人生の最後の時期の過ごし方についての国民の希望はさまざまだが、医療のみならず、本人が誰と、どこでどのように過ごしたいかという、生き方に対する考え方をふまえ、支援していくことが重要である」

この報告書を見たメディアが報じていますが、NHKは「自分の受けたい医療や受けたくない医療を家族と話し合っていくこと」について、まったく話し合ったことがないが国民は55.9%、そして「書面をあらかじめ作成しておくこと」に対して69.7%が賛成、でも、実際に書いているのは、3.2%に注目していました。

これは、書面を残したい人が多いのに、実際には書いていないのだから、もっと啓発して書いてもらおう!大キャンペーンみたいなことにつながる恐れがあります。千葉県の会議でも、そのことをいっぱい話し合いました。人の気持ちは絶えず動いていきます。ちょっとした体験から、意思が決まってしまうこともあります。だから、たくさんの人の生き死にを見ている医師や看護師、介護職の人の意見は大切です。私たちは、そういう現場に肉親で数回しか遭遇しません。いえ、まだ一回も「本当」のことを、「本当」の現場にいたことがない人は大勢います。その時の患者の状態によっては、変わっていって当然なのです。だから、大事なことは「書面」でなく、「話し合っていくこと」なのです。

「終の信託」の周防監督も、「尊厳死に法なじまぬ」と朝日新聞デジタルで述べておられますが、選ぶ前にどんな情報や体験をしたかによって、気持ちって変化していきますよね。

今回の報告書には、「終末期医療の決定プロセスのガイドラインを参考にしているか」の問いに、「ガイドラインを知らない」と答えた人がもっとも多かったと書かれています。これは、おかしいです。ちゃんと実行しているが100%でなくてはおかしいです。その上で、できないこと、問題なことがあがってきてほしいです。患者の意思を大事にしようといいながら、これではまったく大事にされているとは思えません。

患者の意思を記載した書面の取り扱いに対して、「書面に記載した希望を尊重しつつ、家族等や医師または医療・ケアチームの判断も取り入れながら、治療して欲しい」と回答した人が、国民65.3%、医師62.7%、看護師59.6%、介護職65.9%でした。
意思表示の書面に従った治療を行うことを法律で定めることについては、「定めなくても良い」「定めるべきではない」が、国民53.2%、医師71.3%、看護師56.5%、介護職55.8%と、医師は他職種よりも割合が高かったです。患者の意思を尊重するための十分な体制も整えられていませんから、法制化はマイナスと受け止めたのかもしれませんね。

今回の調査では、がん、心臓病、認知症、植物状態と疾患や状態によって、項目が違っていました。じっくり読み込みたいと思っています。

他にも、家族や遺族に対しての対応は、医療より介護の方が充実しているなどの結果も出ていました。

当日の資料が公開になりました。ぜひ、下記を読んでくださいね。

第4回終末期医療に関する意識調査等検討会

2014年3月9日日曜日

ニュースな人 がん患者と家族を支援 藤田敦子(毎日新聞2014)

ニュースな人 がん患者と家族を支援
在宅ケア市民ネットワークピュア 藤田敦子代表

「がんになった夫をずっと家で過ごさせてあげたいと思ったけれど、当時は家で診てくれる医師がどこにいるのかも分からなかった」。夫を亡くした30代の時の苦い体験が活動の出発点だ。当時在宅医だった服部義博医師との出会いがきっかけとなり、同じ思いをしている患者と家族をサポートするため、2001年にNPO法人「千葉・在宅ケア市民ネットワークピュア」を立ち上げた。

「ピュア」はまず、電話相談を開始。試行錯誤しながら情報誌を発行したり、在宅ケア講座を開いたりした。02年からは毎年2月に千葉市でケアフォーラムを実施できるまでに活動が広がった。在宅医や訪問看護師、ケアマネジャーらがパネリストで登壇するためか、毎回満席。今年も16日に開催したが、470人が会場を埋めた。

現在、千葉大福祉環境交流センターで週2回(火・金曜)の電話相談、がん患者と家族の集い、病院緩和ケアボランティアなどを手掛ける。多忙な活動をこなすのは「どこに住んでいても住み慣れた地域の中で、最期まで自分らしく生きられるような社会になればいい」と願うからだ。

超高齢社会を迎え、ピュアの活動もこれからが正念場だと思っている。「他職種とも手を取り合い、苦しみの中にいる患者と家族を支えていきたい」と話す。船橋市出身。【渡辺洋子】

毎日新聞 2014年2月25日