2011年2月26日土曜日

がんでも住み慣れた地域で安心して過ごせるように

藤田敦子のひとり言(緩和ケア・がん対策)

2月20日に千葉県在宅がん緩和ケアフォーラムを千葉市で開催し、500名入れる会場は、参加者でいっぱいだった。基調講演に、NHKプロフェッショナルで紹介された訪問看護師秋山正子さん(左写真)、そして特別講演は、「がん哲学外来」の順天堂大学樋野興夫教授だった。

秋山正子さんは「あなたの住んでいる町は、病気になっても、障害を持っても、年老いても介護や看護、もちろん医療が必要になっても、住み続けることはできますか?」という問いから始まり、いのちに寄り添うケアを届け、どんなときでも、命は輝くことを実証している。生まれてから死ぬまでは連続性があり、30年後に思いを寄せて、夢を語り、現実に変える力にしていこうと呼びかけた。イギリスには、「マギーズセンター」ができ、がんを告知されたときから相談することができる。本当の意味での相談できる場所を作っていくことが必要とまとめた。

樋野興夫さんが作った「がん哲学外来」とは、生きることの根源的な意味を考えようとする患者と、がん細胞の発生と成長に哲学的な意味を見出そうとする病理学者の出会いの場であるという。講演の中で語られた一言一言に重みやユーモアがあり、参加者のこころを揺さぶった。「医療は脇を甘くして、暇げに見える風貌、他人の苦痛に対する思いやりを持つ、人生のいばらの道にもかかわらず宴会・・等々、なるほどと思うと同時に医療従事者としての心構えを考えさせられました。貴重なお話をありがとうございます」「傾聴していく大切さ、寄り添う姿勢の大切さを再認識しました」「正論より配慮、解決はできないが解消はできる等の言葉が心に残りました」「がん哲学外来という耳慣れない言葉が今日の講演をお伺いして、これからがんに対する自分なりの考え方に大変参考になりました」

続くパネルディスカッションも、賞賛の声が数多く寄せられました。「具体的に、わかりやすく、それぞれの立場からの話を聞けてよかった」という声が多いです。病院勤務の方から「患者さんが望んでいることを聞き、最期を在宅で過ごしたいと言われたときに、どうサポートしたらいいかを考えるきっかけになりました」「一番強く感じたのはまず話を聞くことの大切さです。話を聞いて、どうしたいのか?どのような生活をしたいのか?、そこを確認しないと、どんなサービスも専門職も意味がないと思いました」という言葉は嬉しいですね。東北や関西、四国からも参加があり、皆様にとってタイムリーな企画だったようです。スタッフや企画者に対しても御礼があり、がんばってよかったな、と思えた一日でした。
当日は、相談支援センターの相談員も出て、アンケートでは「じっくり話を聞いていただけてよかった」という感想もありました。また、在宅機器の展示や講師のサイン会もあり、盛りだくさんの内容でした。
広報では、チラシを歩いてまいてくれたピュアの仲間たち、そしてNHKやチバテレビの皆さん、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日経新聞、産経新聞、千葉日報、そして地域の新聞、関係機関の皆さん、市区町村の皆さん、本当にありがとうございました。「たくさんの情報を知ることができた」との声に後押しされて、さあ、次年度の企画に入ります。平成24年2月19日(日)に同じ時間でお会いしましょう。

2011年2月24日木曜日

清水陽一氏 葛飾の医療・福祉の連携を

藤田敦子のひとり言(がん対策・緩和ケア)

フォーラムの余韻が冷めやらない中、2月22日は、葛飾シンフォニーヒルズへ行ってきました。新葛飾病院の清水陽一院長が「葛飾から始まる 患者さん・利用者さん中心の医療と福祉」を開かれていて、講師は、国際医療福祉大学大学院の大熊由紀子教授だった。
ピュアの講演会にも東京から参加されている方がおられますが、葛飾では医療と福祉(介護)関係者が一堂に集まることはあまりないそうです。事業所が多いから、難しいのかもしれませんね。今回大熊さんからは、デンマークの医療と福祉の紹介があって、介護保険や在宅医療が始まって、日本でも病気を持っても、障害を持っても、家で過ごすことができるようになったが、認知症の方が、精神病院に入れられてしまう現状を訴えておられました。
がんは、まだ、治療病院や緩和ケア病棟があるから、いいのかもしれません。自分は地域で生きていきたいと思った人、何かを変えていきたいと気がついた人が動いていくしかありませんね。だれもなにもしてくれないと嘆いても、何も変わってはいかないのだもの。
葛飾も、今回の公開講座から、連携が生まれていくといいですね。顔と顔を合わせて、地域の問題をひとつずつ解決していくことって、簡単なようで、やはり、歴史が必要ですもの。

各地でこういう動きが起きてくるといいですね。
3月は島根県で講演させて頂くけど、何か一つでも生まれていくといいな~と思います。

2011年2月18日金曜日

がん患者と家族の相談支援を考えるフォーラムin柏

藤田敦子のひとり言

がんになって、本当につらい気持ちをかかえているとき、あなたは、どんな相談支援を受けたいですか?


2011年2月15日にアミュゼ柏・プラザで、「がん患者・家族相談支援フォーラムin柏」が開かれた。
長崎、三重、大阪、千葉から、それぞれの相談支援についての報告がされ、その後、柏の利用者からのユーモアいっぱいの言葉に心がなごみ、そして、二部では、柏市医師会も交えて、現状の報告などが行われた。
長崎は、緩和ケア普及のための地域プロジェクトの中で、長崎市医師会の中に、「長崎がん相談支援センター」を開設している。地域の皆さんの身近な相談窓口として、また、緩和ケアと在宅医療推進のための拠点でもある。療養場所に関する相談以外に、がん診断・治療に関する相談、受診受領に関する相談などもある。病院の外にあるからこそ、がんを疑うときから、そして在宅療養中も含めて、相談にのることができるのだと思う。病院の色がない相談支援こそ、求められているのだと私は思う。
そして、三重県がん相談支援センターは、以前もこのブログで紹介したが、地域相談支援センターの草分けだと思う。たまたま、がんセンターなど中心になる病院がなく、対がん協会への相談が多いことから平成14年に生活支援事業が始まり、センターは平成20年に開設されている。場所は、三重県津総合庁舎内保健所棟1階である。拠点病院との違いは、入院中の患者でなく、通院中の患者、サバイバーや遺族の相談もあることである。7月からサロンおあしすが始まり、がん死別体験をわかちあう会が始まっている。三重県版患者必携を作るなど、ひとつずつが先駆的で先見性のある事業ばかりである。地域の視点で作られている北村さんのお話に、我が意を得たとうなづくばかりであった。
大阪府成人病センターは拠点病院の相談支援センターからだった。ここで特記したいのは、相談者が、本人より、家族が多いこと。院外からの相談としては、ほかの病院で治療困難と言われたが、どうしたらいいか。治療をできる病院を教えてほしいなど、病院の紹介と、この病院でできる治療内容についてだった。
先のふたつが、地域の相談窓口であり、拠点病院の相談内容との違いはだれが見ても明らかだった。
最後に、柏に作られた「がん患者・家族総合支援センター」の報告だった。ここの特徴は、サポート・グループを支援し、定期的に開催されていることだ。病院の中の相談支援センターでは、「緩和ケア・ホスピスの受診方法」など具体的な相談が多いが、地域にある支援センターでは、どの相談も均一にされている。また、地域包括支援センターからの相談もあり、医療と福祉の連携の拠点にもなっている。
厚生労働省では、平成23年度事業として、「地域統括相談支援センター」が目玉になっている。心理面、生活介護面、医療面など、さまざまな分野に関する相談をワンストップで提供できる体制を作るのである。
今回話を伺い、三重県は対がん協会が運営、保健所にあり、長崎市は現在は医師会、今後市の中心地に作るという。拠点病院にある相談支援センターは自院の患者の相談でいっぱいで、地域におりてはこない。また、はっきりと「がん」とならなければ相談することもない。病院の色をつけない相談窓口を作っていくべきだとフォーラムを聞いて思った。
最後に、終了後の懇親会に参加させていただき、楽しいひと時を持つことができた。国立がんセンター東病院の江角先生、木下先生、皆様、柏市医師会のN先生、本当にありがとうございました!柏市の在宅医療も少しずつ進んできているのですね。
講師の皆様、意見交換ができて、とっても楽しかったです。がんサロンの運営やさまざまな問題への対処など、同じ立場の皆様との意見交換は勉強になりました。またいつの日が、このような場があるといいな~と思いました。たくさん呑んで、たくさん笑って、たくさん勉強できた一日でした。

2011年2月10日木曜日

がん患者5団体 団結し提言へ

藤田敦子のひとり言(がん対策・緩和ケア)

がん対策基本法を作ったときに、私は、「がん患者ネット」に所属し、当時リーダーだった山崎さんらと国会へ行ったり、厚生労働省へ行ったりしていた。あの時、全国がん患者組織として、もうひとつあり、そこは、がん患者大集合をすることを目的にできた組織だったけど、山本たかしさんは、「がん患者が一本化しないと、議員は振り向かないよ」と、一本化へ向けてMLの中で熱弁し説得に一生懸命だった。

ここにきて、がん対策推進協議会の国の委員を務めている天野さん、鹿児島がんサポートの三好さん、すい臓がん患者会の真島さん、愛媛で活躍している松本さん、未承認薬問題に取り組んでいる片木さんの5人が手を結び、がん対策全般に対して、提言を行うことにしたそうです(J-CANの産経新聞ニュース)。また、新しい組織ができた・・・。山本さん、どう思っていますか?

がん対策基本法ができて以来、議員めぐりなどをがん患者はおろそかにしてきたから、片木さんと天野さんが手を結び、動いていくことは歓迎したい。この5人は、日本癌治療学会で講師を務めたメンバーで、医療者にとっても、ウェルカムな人たちのようです。関心が低くなっているがん対策を盛り上げてほしいと願っています。

でも、私のやっている緩和ケア、在宅ケア、遺族ケア。今、アンケート調査をしている末期がん患者の介護保険問題。ずっと、問題を言い続けているのに、患者委員が協議会で取り上げてくれることはなかったです。私の分野は患者が発言するのは難しいのかな?介護保険は、市町村代表の方が発言してくださったので、その方に伝えます。先日の協議会では、本田委員に資料を預けました。緩和ケア・在宅ケアも、医師の委員に伝えていこうと思っています。少しでも前に進むようにしなければ!

がん患者の就労問題も、ネットワークができたようです(雇用維持へ支援組織発足)。この組織のリーダー桜井さんも、日本癌治療学会で講師になっていました。

それぞれの得意分野で、ひとつずつ、答えを出していくこと、それならば、山本たかしさんも納得してくれるでしょう。日本のがん医療対策の新しい夜明けかもしれません。

2011年2月6日日曜日

がん診療連携拠点病院はどうなる?

藤田敦子のひとり言(がん対策・緩和ケア)

パソコンが壊れて、只今復旧中です。フォーラムの申込受けもあるし、パソコンが1台では大変!
このパソコンの動きが悪いのですが、ひとまず、報告を入れます。

第17回がん対策推進協議会が開催されました。今回は、がん診療連携拠点病院について、ヒヤリングが行われ、事務局よりがん診療連携拠点病院の「素案」が出されました。
集約化(小児がんなど)すべきこと、均てん化(緩和ケアなど)すべきことが示されています。
ドラッグ・ラグの解消の為に、拠点病院の認定に、臨床試験の推進を入れてはどうか?とも書かれています。
認定病院については、それぞれ、独自に作られてきています。千葉県でも会議にて提案がありましたが、治療が満たされていないところを認定する案には、千葉県の委員から賛成は得られませんでした。今回、国が示した形を最低ラインとして、独自に進めていくといいですね。私は、緩和ケア外来は必須にしてほしいと思っていますが、ここは、協議会委員にお任せになるのでしょうか・・・。専門委員会の委員にお伝えだけはしてみようと思っています。

ヒヤリングを受けるだけでも時間がかかるのに、それぞれの委員から提出資料の説明があり、今回も十分な審議を行われなかったと感じています。議論にならずに発表で終わってしまう。このまま、意見を出すだけで終わってしまうのでしょうか・・。
ヒヤリングは、広島県、東京都の取組、そして静岡県がんセンター山口総長からでした。

広島県からは、県独自のがん医療ネットワークの報告がありました。

東京都からの報告に、「拠点病院の整備で、がん対策はかなり進んだ。拠点病院、都認定病院、東京都医師会も一緒に協力して、がん登録、連携パスなどができてきた。過去には絶対できなかった」と拠点病院について好意的な意見が出ていました。連携バスはステージ1.2ができたところです。ただ、地域の中小病院や専門病院をどうするのか、拠点病院以外でも、がん治療を行いたいという病院医師からの希望もあり、そこのところをどうするのかが、今後の課題だと言われていました。

山口総長からは、治療だけでなく、進行・再発・転移の後に亡くなる人についても対応せねばならない(緩和医療)。また、患者・家族の暮らしを守る活動も求められている(相談支援センター)。均てん化や地域連携パスなど行政との協働も進めなければならない。院内がん登録を進める。患者・家族にとって、地域における心のよりどころ・地域によって育まれる存在である、との話がありました。ここのところが、従来の病院にかかっている患者さんだけを考える病院のあり方と決定的に違うところですが、機能しているとは言いがたいですね。

前川委員・三好委員・安岡委員からは、相談支援センターの状況調査報告があり、天野委員からは、地域統括相談支援センターについての調査報告がありました。設置に向けて動いているところもあるんですね。読売新聞の本田委員に、千葉県の患者等の満足度調査を私からお渡しし、提出してもらいました。次回が、相談支援センターのあり方ですから、ぜひ、参考にしてもらいたいですね。