2012年5月9日水曜日

高齢社会の問題解決を紐解く 武藤真祐さん


NPOピュアの藤田敦子です。大学院生モードです。

今回は、医療法人社団鉄祐会 理事長 武藤真祐さんから「戦略コンサルティング集団での経験が活きる」という講義の内容を、藤田流でまとめました。講義を受けた人の主観が入りますので、ご了承くださいね。

『あるべき姿を定めることが、問題解決手法の基本』

医療法人社団鉄祐会 理事長 武藤真祐さんから

◎侍医からコンサルタント、在宅医療へ

武藤さんは、東京大学医学部を卒業後、循環器内科へ入局、そこで金澤一郎先生、黒川清先生、矢崎義雄先生、永井良三先生とすばらしい4人のメンター(人生の師)に出会いました。推薦で侍医を務めた後、「社会の課題を解決したい」と戦略コンサルティング会社「マッキンゼー&カンパニー」へ突然入社し、課題解決の手法を学びました。そして2年後、2010年1月に文
京区で在宅医療診療所を開設し、翌2011年5月に、高齢者の孤立を防ぐ社会システムを創りたいと、一般社団法人「高齢先進国モデル構想」の活動を開始しました。

また、東日本大震災の支援で訪れた石巻市の悲惨な状況を改善したいと同年9月に石巻市に診療所を開設し、被災地と都市部で高齢者の健康と生活を守っています。今回の講義では、医師を一度離れ、「自分の生きる道」を「在宅医療」に見いだした武藤さんから、「問題解決の手法」を学びました。*参考資料:秦充洋氏作成

◎問題の本質を探る「ロジカルシンキング」

問題を解決するためには、「問題」となっていることを的確に見つけ出すことが大切で、ここが簡単のようで難しい。一見、問題のように思えても、本質的な解決へつながらないことがある。まず、「あるべき姿(ゴール)」をきちんと考え、「課題(what)を特定」、「原因(why)を究明」、「解決策(how)を立案」と進んでいく。この時に大切なことは、「問題」から、いきなり「解決策」を導くような場当たり的な対応を行わないことである。問題を深く掘り下げていくことにより、真の問題にぶつかり、そこから細かな原因を究明し、解決のためのアイデアを複数で出し合って、一つずつ個別的な解決策が生み出されていくのである。

また、問題から課題を見つけ出すためには、いくつかの「切り口」に分けて考えていくことが大切であり、この「切り口」は次のアクションにつながるものでなければならない。分解するポイントは、下位の論点が上位の論点を説明し、横方向は同じレベルがモレダブりなく並ぶ「ロジックツリー」であり、定めた軸に従ってMECE(ミーシー、個々に見てダブりがなく、全体的にみてモレがないこと)に分解すること、また、「計算式」や「プロセス」、「マトリクス」などフレームワークを定めていくとモレがない。一般的に使う「5W1H」や「戦略の3C」なども有名である。

◎いくつもの引き出しから答えを紐解く

個々の課題が特定されたら、課題に至る因果関係を解明するため、「仮説」を立てて、そこから「検証」を行っていく。この検証を行う段階で大事なことは、「なぜを最低5回繰り返す」ことであり、現場感があって具体的なものや実際のアクションにつながっているものが、良い「論点深掘り」と言われている。
原因を究明したところで、ブレーンストーミングでたくさんアイデアをだし、自分だけでなく、複数の人の力を借り、フレームワークを使いながら、「解決策」を導き出していく。この時に、「過去志向」でなく「未来志向」で訊いていき、打ち手を一緒に考えていく。わかっている事やすでにある議論をもとに整理をしても、ただの「整理学」で終わってしまう。MECEなフレームワークを組み合わせて問題を分解することにより、真の原因や思いもよらない発見が隠されていることがわかる。

結局、問題を解決していく難しさとは、「あるべき姿」が間違っていたり、イメージができていない、「現状」の認識・分析ができていない、偏った「解決策」で視野・発送が狭窄することであろう。「自分の立場」、「現状」からの思い込みからは何も生まれてこない。「固定観念」を解き放ち、無意識の「前提条件」にチャレンジしてこそ、問題を解決することができるのである。

◎リーダーシップの旅へ

武藤さんは、マッキンゼーに入り、人生を決める大事な本「リーダーシップの旅」と出会いました。その著者であるISL代表理事野田智義さんは、「リーダーシップとは、多くの人にはまだ見ていないものを見て、新しい方向性とビジョンを打ち出し、人々を巻き込み納得させて実現に向かわせることである」と言っている。「コロンブスの卵」でわかるように、成し得る前には想像もつかない、不可能に思えることが、事後には当たり前に思えること、つまり非連続を飛び越えていくことに他ならない。

リーダーは、確たる価値観に基づく使命感、夢や情熱、さらにはプロフェッショナルとしての自負を持ち、「リード・ザ・セルフ」の旅に立つ。人を巻き込み、人を引きつけ、そして自分の夢を全体の夢に昇華する「リード・ザ・ピープル」となり、社会全体に広がっていく「リード・ザ・ソサエティー」となっていくのである。リーダーとは、人を率いる者ではなく、いつの間にか人が自発的に付いてくる人間のことを指す。人々を飴とムチで動かすのではなく、人々の内在的な意欲に基づく行動を誘発するのである。ただ、付いてくる人(フォロワー)が多くなると、マネジメントとリーダーシップは近似し始めてくる。「利用された」と感じ、離れてくる人も出てくる。鍵となるのは、「自分が人をリードする」のではなく、「自分が人に助けられ、その結果、より自分をリードできるのだ」という意識の進化である、と野田さんは言っている。

武藤さんは、自らの内なる声を聴き、「困っている人を救いたい」「団塊の世代がボロボロで死んでいく社会の課題を解決したい」と立ち上がった。今、武藤さんの旅は始まったばかり。問題解決の手法は、知るだけなく、使いこなしていくからこそ、意味が出てくるのである。私も、野田さんの講義を前に聴いたことがある。今回、武藤さんから問題解決の手法を伺い、また人柄に触れて、武藤さんの「リーダーシップの旅=住み慣れた地域で自分らしく生きれる社会システム」の行方を、これからも見つめていきたいと思っている。

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