NPOピュアの藤田敦子、院生モードです。
各国では、ホスピス・緩和ケア(主にがん)から、高齢者などすべての人のラストについて、すごい勢いで研究が進められています。2009年にイギリスでは「認知症と共に、よく生きる」(living well with demenntia)がスタートし、国家戦力として認知症の5か年計画ができました。そして、日本でも、認知症対策を180度転換する「認知症になっても住み慣れた地域の良い環境で暮らし続けられる社会の実現」を目指し、報告書が厚労省プロジェクトチームより発表されました。
施設重視の日本の中では、下記の番組がなければ、実現できなかったと思います。すごいです。
認知症の当事者の声を社会に発信し変える 川村雄次さん
〇認知症の人から見た世界
認知症になると何もかもがわからなくなると、家族やケア従事者にお任せだったのを、一人のデイレクターが変えていった。川村さんは、2003年から認知症に取り組み、クローズアップ現代で「痴呆の人 心の世界を語る」と、認知症本人が、本人の視点で医療・ケアに求めるものを語る番組を作った。
その番組の主人公であるクリスティーン・ブライデンさんが、とにかくすごい。46歳の時に認知症の診断を受けて、「残された時間が一年でも楽しい時間になるよう」にと、結婚相談所を訪ねて結婚!。そして、心の内を本音で話し、本人が求めていることへの支援を訴えていった。認知症の初期は、本人も忘れていくことへの恐怖や恥ずかしさがあると聞いたことがあったが、まさに「アイデンティティの危機」があり、彼女はその状態を「霧につつまれて生きる」と表現している。自分が自分でなくなっていく恐怖の中で、治る治療にすがるのでなく、下り坂をケアを受けながら心豊かに生きたいと訴えていた。
認知症になりたくない、なったらすべてが終わりと絶望の中にいる人たちに彼女の笑顔や日常が映像を通して語りかけていく。書籍や講演とは違い、映像はリアルタイムに多くの人に伝えることができ、そして、感情のひだまでを伝えていくことができる。認知症のシリーズは、2003年に始まり、そして2009年と続けていき、社会に大きなインパクトを与えていった。
〇認知症とは、真の自己への旅人
クリスティーンさんの登場は、認知症の世界を変えていった。認知症の症状は、様々なものが一緒になり起こっていくが、世間の眼が「患者=治してあげないといけない対象」と追いつめていった。そこを変えていく。クリスティンさんは、〝患者“という言葉は大嫌いと言う。患者と言う言葉は、不完全で望ましくない差異を表し、海上寮診療所の上野医師は、「医師は患者として位置づけた時点で、自動的に管理優先、上から目線で医療者モードに入っていく」と言う。本当にそうだ。患者と言われた瞬間、すべて医療者にお任せで、しろうとは意見を言ってはいけない位置に置かれてしまう。自分の身体、自分の心のことなのに、ただのあやつり人形になっていく。
川村さんは、デイレクターの仕事から少し距離を置く仕事になってからも、裏えにしの会である「お福の会」の事務局になり、認知症になっても、人として生きていける道を探り続け、DVD認知症ケア全3巻を作った。認知症とは、「真の自己への旅」、それこそがスピリチュアリティであり、自己存在の旅なんだと思う。進行を遅らせる薬の開発もされて、認知症の人のために早期に関わる制度もできた。
点を線にそして大きな面に、川村さんの挑戦は続く。
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